ベテランこそ臆病であれ!

2006/03/29(水)

お彼岸の雪山で相次いだ遭難、仙ノ倉山(新潟)では9人バーティーの隊列から遅れた2人が、阿弥陀岳(八ヶ岳)では凍傷で歩けなくなった3人バーティーが、その尊い命を失う最悪の結果となってしまった。みな冬山の経験も豊富なベテランだったが、天候の急変に、進退窮まる状況に追いやられてしまった。それでも雪洞を掘るなどしてビバーク(露営)して最後まで最善を尽くした姿に、同世代の山を愛する者として無念の思いが痛いほど分る。 いったい何が彼らの判断を鈍らせたのか、真剣に考える事が肝要だと思う。写真(昨年9月撮影)は、阿弥陀岳の東尾根を100mほど下った地点で、今回の遭難現場付近と思われる。急斜面が続きテントの設営は極めて困難、さらに強風を遮る物は何も無い。不幸な事故を繰り返さない為にも、ベテランこそ臆病であれ!危険領域に入り込む前に 『 引き返す勇気 』 を思い出してほしい。

着陸はいつも真剣勝負 Ⅲ

2006/03/20(月)

高度が翼幅以下になると地面効果( 空気のクッション )が働くので、これを利用して地面スレスレを流れるように飛んで減速を待つのだが、右から横風を受けているので放っておけば左に流されてしまう。そこで、風上側の翼を下げて反対側のラダーを踏み込む、ウイングロー法を使うのだが、センターラインだけに集中してはいられない。速度の低下に連れ機体が沈み始めるので、最後のフレアー(機首を引き起こす)のタイミングを計らなければならない。ポイントは目線を遠くの滑走路エンドに移して、地平線が上がってくる感じに合わせ、『 ゆっくりと滑らかに 』 操縦桿を引き、『 静かに静かに 』 接地 ( 直前に失速警報が鳴れば理想的 ) させる。しばらくはメインギヤー(主輪)だけで走り、さらに減速させてノーズギヤー(前輪)をトンと地面に降ろす。ほっとする瞬間だが、最後まで気を緩める事なく直進を維持しながら、フラップをフルアップ とし、ゆるくブレーキをかける。練習生の時から通算で2000回を超える着陸を経験してきたが、アプローチも含めタッチダウンまでの、張り詰めた緊張感は今も昔も変らない。

着陸はいつも真剣勝負 Ⅱ

2006/03/15(水)

引込み脚を持つ航空機には、車輪の出し忘れに対するフェールセーフ(万一の時安全な方向に作用するシステム)が施されている。2369のそれは、スポイラー(主翼面からせり出す空気抵抗板)のロックを解除する、またはフラップをフルダウンとした時に車輪が出ていないと警報音が鳴る仕掛けなのだが、着陸直前の大きなプレッシャーの中でアラームを聞いたら冷静に、確実に、対処(ゴーアラゥンド)できるだろうか。さらに滑走路末端に差し掛かる頃、目前に近づく硬いコンクリートの地面に恐怖を感じ無意識に操縦桿を引いてしまう恐れが有る。実は本当に怖いのが、この高起こしによる失速で、目の錯覚(ホームベース双葉の15メートルに比べ、4倍もある60メートルの横幅に実際より低いと感じてしまう)に惑わされてはいけない。ここまで来たらチックする計器は速度計だけ、タッチポイント右手のウインドソック(吹流し)を確認、横風を意識して高目のパス(進入角)で速度をキープする。  ...continue

着陸はいつも真剣勝負 Ⅰ

2006/03/08(水)

P:Fukushima Radio.2369 now 2 miles on final runway 01.
T:2369 roger.You are number one.Runway is clear.Wind 040 at 8.
P:Roger.runway 01 is clear.2369.
管制塔から優先順位1番の着陸許可が下りた。順番待ちの後続機はホールド(上空で旋回)し、さらに3番機も空港に接近している。管制官もこちらを注視しているだろうから、早めにランディングライトを点けポジションを知らせよう。後続機に配慮して、通常より早めの進入速度で降下しながら、慌ただしい中でも冷静に最終チェックを行う。特に絶対に忘れてならない「 ギヤーダウン 」(車輪は出てロックされているか)。うっかり胴体着陸でもやったら、機体の損傷だけでは済まない。 機体の撤去までの間、国際線も入る空港が閉鎖になるのだから、その責任は重大だ。他にも、不意のゴーアラゥンド(安全に着陸できないと判断した時の着陸復行)に備え、プロペラピッチ(ねじれ角)を上昇位置に設定し、燃料ポンプの作動などと、いやが上にも緊張感は高まる。タッチポイントの左手に設置された PAPI (進入角表示灯) は赤2灯、白2灯で適正な降下角度にあることを意味している。右30度からの横風に流されない様に、滑走路の手前に赤い橋脚の様に見えるアプローチセンターライン(進入灯)を狙って行こう。・・・フラップダウン!